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業務用エアコンのリース
会社設立や開業時には、OA機器やオフィス家具など、様々なものを揃えなければならないため、どうしても出費が重なってしまいます。
初期費用を抑えるために、業務用エアコンやオフィスで利用するコピー機、ビジネスフォン、店舗で利用するレジスター、営業車両などを「リース契約」で導入しようと検討する企業も多いでしょう。
今回は、その中から業務用エアコンに絞って、リース契約での導入を検討しようと思っている方々に向けて、業務用エアコンのリースの方法やメリット、注意しなければならない点などを解説します。
まずは、リースを含めた業務用エアコンの導入方法についてチェックしていきましょう。
業務用エアコンの導入方法
業務用エアコンを導入する方法として、主に以下の3点があります。
- リース
- レンタル
- 買い取り
リースとレンタルは、リース会社もしくはレンタル会社から、業務用エアコンを「借りて利用する」という点では似ていますが、決定的な違いがあります。
業務用エアコンのリースとレンタルの違い
リースとレンタルでは、契約に複数の違いがあります。
最も大きな違いは契約期間の長さです。
リースの場合、契約する機器などによって異なりますが、契約期間は5年~10年程度が主流で、業務用エアコンも契約を結ぶと、中~長期で利用することができます。
業務用エアコン以外では、コピー機などのOA機器、パソコン、サーバーなどのIT機器、工場における産業機械、工作機械、重機などがリース契約で利用されています。
逆に、レンタルは、短期間で借りるものが多く、日単位や週単位、月単位で契約を結びます。
日常生活でも、レンタカーやレンタサイクル、DVD、洋服、掃除用具など、日単位や週単位で借りられるものが「レンタルサービス」として普及しています。
また、リースの場合は、利用者がリクエストした商品を、リース会社がその都度、購入して賃借しますが(ファイナンスリース)、レンタルの場合は、レンタル会社が既に所有している製品の中から、利用者が希望に近いものを選択をします。
そのため、レンタルでは基本的に中古の製品を使うことになります。
リース | 契約 | レンタル |
長期(主に5年~10年) | 契約期間 | 短期(主に日、週、月単位など) |
リース会社が製品を購入して賃借 | 製品 | レンタル会社が所有しているものから選択 |
新品 | 新品・中古 | 基本的に中古 |
このように、リース契約では利用者の希望に従って、リース会社が代替で製品を購入をします。そのため、業務用エアコンでも希望するメーカー等を自由に指定することができます(ただし、販売店によって取り扱いしていないメーカーもあります)。
一方、レンタルの場合は、レンタル会社が保有している製品から選択して借りるサービスなので、業務用エアコンを選ぶ際のポイントである面積や用途などに、必ずしも合致する製品があるとは限りません。
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また、リースは原則として中途解約をすることができません。一方、レンタルであれば契約期間中での解約もOKです。とは言え、レンタルの場合でも違約金や解約手数料、撤去費用等が発生してしまうこともあるので、契約を結ぶ際は事前にチェックしておきましょう。
気になる料金ですが、リースとレンタルの料金設定を比較すると、リースの方がレンタルよりもリーズナブルです。
月単位などで借りられるOA機器では、契約期間によっては(短い期間であれば)、レンタルの方が総額で安くなることもありますが、業務用エアコンは長期間利用するため、契約期間が同じであれば、レンタルよりはリースの方が安く済みます。
さらに、契約期間が満了になって、再度リースする場合は、さらに料金を安くすることができます。
その代わり、レンタルはリースのような与信審査がありません。
手軽に導入できることこそがレンタルの大きな魅力ですが、手軽な分だけ料金は高めに設定されており、利用期間が長ければ長いほど、その差は歴然となってしまいます。
なお、契約期間満了の後は、リースでもレンタルでも、基本的に「返却」をしますが、リースの場合は、再リース契約や買い取りなど、複数の選択肢から希望の方法を選ぶことができます。
レンタルの場合でも「延長」は可能ですが、契約満了後の買い取りはできません。
業務用エアコンをリースするメリット
業務用エアコンをリースすると、以下のようなメリットがあります。
- 保険が適用される
- 経費で処理することができる
- 管理が簡単
メリットの内容を1つずつ確認していきましょう。
保険が適用される
業務用エアコンをリースで設置すると、動産保険が適用されます。
特に最近は、全国的に台風などの被害が頻繁に報じられており、それらの災害に対して、何らかの対策が必要です。
例えば、台風や水害の被害でエアコンの室外機が水に浸かってしまったり、倒壊してしまった場合、または室外機がクルマに当て逃げされて破損してしまった場合など、天災や事故による損害に動産保険が適用されるので、安心して利用することができます。
ただし、動産保険の対象となるものは、火災・水害・雪害・落雷などの天災・または爆発・事故・盗難などと限定されており、地震・噴火・津波・原子力による被害・故意または重大な過失による損害は対象外とされています。
また、業務用エアコンが一度も故障せずに動き続けてくれると良いのですが、エアコンが必要な季節に、突然動かなくなってしまう懸念もあります。
故障で快適な職場環境を提供できなくなると、業務効率が落ちるだけではなく、オフィスや工場内の機器等にも重大な影響を及ぼしてしまい、予定外の出費が伴います。
このような問題を解消するために、それぞれメーカーで「安心保証リース」などのサービスが提供されています。その他にも販売店が定期点検などの保守を行ってくれることもあるので、業務用エアコンを契約する際には、必ず保守や保証について確認しておきましょう。
なお、リース期間内であれば、何度故障しても、基本的に無料で修理をしてもらうことができます。
さらに、動産保険で対象外になる災害等に備えて、プラスαで民間の保険サービスに加入しておくと、ダブルで不安を解消することができます。
経費で処理することができる
業務用エアコンをリースで借りるメリットの1つとして、リース料金を全て必要経費で処理できる点が挙げられます。また、一括購入時に発生する減価償却の計算なども必要ありません。
資産管理などの償却計算や財務管理が不要になるため、管理の手間を省くことができます。
大きな会社(資本金5億円以上の企業)では、賃貸借処理が行えなくなるので、基本的には売買処理となりますが、1件あたりの金額または1科目のリース料が300万円以下の取引のケースでは、そのような大企業でも賃貸借処理を行うことが可能です。
管理が簡単
複雑な償却計算や財務管理が不要になり、リース料を支払うだけなので、業務用エアコンの所有に伴う事務処理が大幅に削減され、事務管理の省力化を図ることができます。
また、動産保険を使用できることも、管理側が安心に感じる理由のひとつです。盗難・事故などで発生したエアコンの損害は、保険会社に任せてしまって問題ありません。
会社設立以外にも、以下のようなリースがあるので確認してみましょう。
- 学校向けサービスの公立高校リース
- 農業向けサービスの農業事業者向け安心保証リース
- ビル用エアコン(ビル用マルチ)など大型物件向けのビル用マルチリース
- フロン法定期点検付き安心保証リース
業務用エアコンをリースするデメリット
業務用エアコンのリース契約には、メリットだけではなく若干のデメリットも存在します。
たとえば、リースでは途中解約をした時に(原則としては不可です)、リース料金の残額を全額負担しなければなりません。
また、販売価格にリース料率がプラスされてしまうので、一括での買い取りと比べて割高になります。
さらに、リースで業務用エアコンを導入した場合、所有する権利はリース会社にあり、契約満了時には、業務用エアコンを返却する必要があります(リース契約満了時にエアコンの買い取りや再リースは可能です)。
なお、会社設立時や開業時は、業務用エアコンのリース契約を行いたくても、与信審査に通らなくてはならず、審査の通過が最大の壁になってしまうことがあります。
審査に通らないことには、リース契約を結ぶことができません。これは業務用エアコンに限らず、コピー機やビジネスフォンでも同様です。
新しく会社を設立した際や店舗を開業した際は、信用が低くて審査に通らないことが多々あるので、 そのような場合は、全てのオフィス機器を一括でレンタルしてくれる業者に依頼するか、購入(買い取り)をするしか選択肢がありません。
※会社設立のサポートをする会社で、業務用エアコンや複合機、ビジネスフォン、PC、オフィス家具などを一括でリースまたはレンタルしてくれる業者に相談してみましょう。
リース満了後の業務用エアコンは?
リースが満了したら、利用していた業務用エアコンは、どのように処理すれば良いのでしょうか?主な選択肢は4つあります。
- 再リース
- 新しい製品のリース
- 撤去
- 買い取ってもらう
再リース
再リースは、リースで利用している業務用エアコンを、そのまま継続して利用する方法です。再リースを選択すると、1年ごとに契約を更新することが可能です。
5~10年などの長期リースの契約満了後に、同じ製品を再リースすると、エアコンの効き目が悪くなる等、何かしらの不具合が生じることもあります。
それでも、1年ごとの更新なので、その都度、入れ替えを含めた様々な方法を検討することができるので、見直す機会にもなります。
最大のメリットは、今までのリース料よりリーズナブルな料金になることで、再リースの場合は、既に長い期間支払いをしているため、リース会社では元(モト)を取ることができており、再リース料はかなり安く設定されます。
できるだけ業務用エアコンにコストを掛けたくない場合は、再リースを視野に入れてリース契約を検討すると良いでしょう。
ただし、「安心保証リース」などの保証が付かなくなることもあるので、事前の確認が必要です。
このように再リースは、料金の安さが一番の魅力ですが、長く利用した業務用エアコンを再契約で使用し続けていると、契約途中で製品や部品が生産中止になってしまい、メンテナンスに対応できなくなる可能性があります。
契約満了前に、利用している業務用エアコンの調子やメーカーの動向(生産中止や新製品について販売店に確認する等)に気を付けながら、故障や不具合が多いようであれば、再リース以外の方法も検討すると良いでしょう。
※エアコンの補修用性能部品の保有期間は、製造打ち切り後、10年です。
新しい製品のリース
新しい製品のリースとは、リースで利用している業務用エアコンを新しい製品に入れ替えして、新たにリース契約を結び直す方法です。
「レベルアップ更新」など、様々な言い方がありますが、今までリース会社に支払っていた料金とあまり変わらない金額で、新しいエアコンを利用することができます。
5年や10年も歳月が経てば、エアコンの機能や省エネ性も格段に進化し、さらに新しい製品なので不具合や故障の懸念も少なくなります。
ただし、再リースならば利用している業務用エアコンをそのまま使い続けられるため、新たな設置等の必要がなく、不便を生じる期間はありませんが、新しい製品をリースする場合、設置までに多少の時間が掛かってしまいます。
撤去
撤去とは、今までリースで使っていた業務用エアコンを、返却することです。返却の場合は、撤去費用や返却する際の輸送費などは、契約者の負担になります。
なお、業務用エアコンは家電リサイクル法の対象外の扱いで、メーカー側が回収・リサイクルする義務はありません。料金はフロンガスの回収に2~3万円程度、機器本体の撤去、処分に対して2万円以上が掛かります。
また、取り外しが困難な天井埋め込み型は9~10万円など、業務用エアコンのタイプによって料金に大きな差があります。
買い取ってもらう
リース契約をしていた業務用エアコンを、契約満了後に買い取りした後に、不要であれば(別のリース会社から新規リースする、閉業するなど)、「売る」ことも可能です。
リース契約の場合、所有権はリース会社にありますが、支払いを済ませて買い取ってしまえば、所有権を得ることができます。
買い取りしてしまえば、業務用エアコンは自社の所有物になるので、使い続けようと売ってしまおうと、取り扱いは自由です。
ただし、すべての製品が買い取り可能とは限りません。リース満了後に「買い取りが可能なのか?」をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
なお、買い取りに対応している業者も、中古市場での価格に相当する価格での販売となります。これは、リース機器を格安価格で販売してしまうと、税務上、リース取引が否認される可能性があるためです。
さらに、長年使用したエアコンを買い取ろうとしても、メンテナンスをスムーズに行うことができなくなる可能性があり、それを理由として買い取りを拒否されるケースもあります。
※買い取った業務用エアコンを中古として売る場合も同様です。正常に動けば、古い型でも買い取ってくれる業者もありますが、部品の生産中止などメンテナンスができないことを理由に買い取ってもらえないこともあります。
査定金額は製品・年数・状態により大きく異なり、業者によっては一括で大量の買い取りにも対応しています。
業務用エアコンを購入(買い取り)の方法
業務用エアコンを導入する際に、リースやレンタルではなく、購入(買い取り)する選択もあります。
リースと買い取りには、どのような違いがあるのでしょうか?
会社設立や開業直後は、まとまった金額の設備投資をしなければならないので、どのような方法で導入するのか?の検討は必要不可欠です。
資金にゆとりがないことを理由に買い取りを諦めるのではなく、借り入れを検討するなどの選択肢もあります。
もちろん、資金にゆとりがあるようなら、購入(買い取り)でも良いでしょう。リースとは違い、購入時にまとまったお金が必要になりますが、リース料率が加算されないため、トータルコストで比較すれば、最も安く済む導入方法です。
ただし、業務用エアコンは機器そのものの価格以外にも、工事費などが掛かり、1台でも数十万円は必要で、さらに原則として一括での支払いになります。
また、リースでは取り扱っていないタイプの業務用エアコンもあるので、あらかじめ確認しておきましょう(天井内に完全に埋まってしまう場合や移設が困難なダクト形など)。
なお、業務用エアコンは、フロン排出抑制法に従い、定期的な自主点検をしなければなりません。このような点検を外部に任せると、費用が発生するので、そのことも覚えておきましょう。
フロン排出抑制法とは?
業務用エアコンなどに使われているフロンガスは、オゾン層破壊や温室効果が問題となっています。なかでも、経年劣化など使用時における設備不良等の漏えいが指摘されており、これを規制するためにフロン排出抑制法ができました。
該当する設備を使用する管理者に対しての責任が定義づけられており、購入(買い取り)による自己所有の場合は、当然ながら所有者が、リース・レンタルの場合は日常的に利用または管理している人が「管理者」とされます。
リース・レンタルの場合、所有権はリース会社またはレンタル会社になりますが、点検の「管理者」は利用者になるので注意が必要です。
業務用エアコンの保守・点検
上記のフロン排出の点検も含めて、業務用エアコンには以下のような点検や清掃があります。
点検項目・点検名 | 点検内容 | 点検の頻度 |
定期点検(保守定期点検) | 予防保全を目的とした点検 | 1年に1回 |
フロン漏洩点検 | 室外機の異常振動や異常音、熱交換器の腐食などの点検 | 1年に4回 |
フロン漏洩定期点検 | フロン漏洩の有無を判断する点検 | 1年に4回 |
フィルタ清掃 | 効き目やにおいを目的とした清掃 | 1年に数回 |
スポット修理 | 故障や不具合の際の修理や部品交換 | 都度 |
管理報告書作成 | 機器毎の記録簿の作成やフロン漏洩量の管理など | 都度 |
これらの点検や清掃・修理等はあくまでも一例で、販売店のサポートプランやメーカーによって、多少異なります。
また、業務用エアコンから悪臭がする、効き目が悪い、反応が悪いなど、様々なトラブルを予防するために、定期的に専門的な修理や洗浄を行ってくれる専門の業者もあります。
まとめ
今回は、業務用エアコンのリースについて、解説をしました。
業務用エアコンの導入方法には、リース・レンタル・買い取りなど、複数の選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
短期間の利用で済むような機器ではないので、基本的にはリースあるいは購入(買い取り)になるでしょう(ただし、会社設立時にはリースの審査に通らないこともあるので、その他のOA機器やオフィス家具と一括でレンタルできる販売店の利用がおすすめです)。
リースには「保険が適用される」「経費で処理することができる」「管理が簡単」「契約満了後の再リースで格安になる」など、多数のメリットがあります。
設立3年後には、赤字にさえなっていなければ、問題なくリースの審査が通るようになるので(業績以外にも条件がありますが)、それまではレンタルで利用しながら、タイミングを見てリースに切り替えると良いでしょう。
なお、会社設立時やオフィス開業時には、業務用エアコン以外にも様々なOA機器やオフィス用品が必要になり、1つ1つはそれほど高くなくても、合算すると膨大な金額になってしまいます。トータルコストを算出してから、業務用エアコンに使える予算を決めましょう。
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