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会社を設立するメリットとデメリット
現在もしくは将来的に事業展開を考えている場合、「会社設立」か「個人事業主」で迷っている方も少なくないでしょう。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、結論から言うと、会社設立の方がメリットは多いです。
ただし、会社と個人事業主では長所と短所が異なるので、一概に「会社設立が良い」とは言えません。メリットだけではなく、デメリットも踏まえ、最適な事業展開を考えていきましょう。
この記事では
- 会社設立のメリット5選
- 会社設立のデメリット3選
- 個人事業主のメリット3選
- 個人事業主のデメリット3選
を紹介しています。
ぜひ最後までご覧ください。
【結論:会社設立の方がメリットが多い】表で解説
会社の設立と個人事業主では、メリット・デメリットにどのような違いがあるでしょうか。
下記の表にまとめてみました。
会社 | 個人事業主 | 有利 | |
社会的な信用 | 個人より高い | 会社より低い | 会社 |
事業開始までの費用 | 株式会社 ⇒ 202,000円~ 合同会社 ⇒ 60,000円~ |
0円 | 個人 |
開業手続き | 11種類の必要書類を用意 | 届出のみ | 個人 |
資金調達 | 有利 | 不利 | 会社 |
経費の範囲 | 対象範囲が広い | 法人と比べると範囲が狭い | 会社 |
退職金 | 支払い可能 | 支払い不可能 | 会社 |
決算の期間 | 自由に設定可能 | 1月1日~12月31日 | 会社 |
法人税、所得税の税率 | 15%~23.2% | 5%~45% | 会社 |
生命保険の扱い | 全額経費 | 所得控除 | 会社 |
社会保険の負担 | 会社負担あり | 事業主の負担なし(従業員5人未満) | 個人 |
赤字の繰り越し | 10年 | 3年 | 会社 |
責任範囲 | 有限責任(出資額の分まで) | 無限責任 | 会社 |
このように、表を見る限りでは、個人事業主よりも会社を設立した方が、多くのメリットがあることが分かります。
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【会社設立のメリット5選】
ここからは、会社設立のメリット5選を具体的に紹介します。
まずは、会社設立のメリットをチェックしてみましょう。
- 会社の方が信頼度が高い
- 会社の方が資金調達をしやすい
- 会社は欠損金を10年間繰り越しできる
- 会社は節税面でも有利
- 会社は決算月を自由に設定できる
①会社の方が信頼度が高い
「個人事業主」よりも「法人」の方が信頼されやすい傾向があります。新規取引を法人に限定している会社も存在するほどです。
ウェブサイトを閲覧する際や名刺を渡された時など、個人よりも法人の方が信頼感があるように、取引先にとっても「個人事業主」よりは「法人」の方が心理的に安心感が大きいと言えるでしょう。
②会社の方が資金調達しやすい
新規店舗や新規事業の立ち上げの際、自己資金だけでは足りなくなる時があるでしょう。その際に、金融から融資を受けようとした場合、法人の方がイメージが良く、資金調達しやすい利点があります。
また、法人であれば金融融資だけではなく、株式発行により出資者を募る方法もあります。
③会社は欠損金を10年間繰り越しできる
青色申告での確定申告を、各事業年度に毎回提出している法人に限り、生じた欠損金を10年間繰り越しできる制度があります。
こちらに関しては、国税庁のホームページに詳しく記載されているので、ご確認ください。
④会社は節税面でも有利
大きな利益が出るのであれば、個人よりも会社の方が節税しやすくなります。
個人事業主が課せられる所得税は、所得が増えるほど負担の割合が大きくなる累進課税で、負担割合は、最大で45%まで上がります。
一方、会社の方は法人税が課せられ、所得が800万円以下で15%、800万円超で23.2%です。
個人が最大で所得の約半分も税金で引かれるのに対し、法人はどれだけ利益を上げても最大で1/4以下の課税で済みます。
また、会社は生命保険や社用車など、経費として認められる幅が大きいことも特徴です。
仮に、経営者が亡くなった場合、個人事業主は全ての財産が相続税の課税対象になりますが、法人であれば会社の所有物に相続税は課税されません。
⑤会社は決算月の設定を自由に設定できる
個人事業主は決算が1月1日~12月31日までと時期が決まっています。
それに対し、法人は定めがなく、決算の期間を自由に決めることができます。
売り上げが多い月 or 少ない月を見極めたうえで、決算月を設定できるので、計画的な経営ができるようになります。
【会社設立のデメリット3選】
ここからは会社設立のデメリット3選を紹介します。
- 会社は設立・経営コストが高い
- 社会保険と労働保険に加入する義務がある
- 法人住民税が高い
①会社は設立、経営コストが高い
法人設立の際、定款承認手数料や登記申請などに20万円以上は掛かってしまいます。さらに事務用品や、OA機器を用意する必要もあるため、最低30万円は必要です。
また、会社規模が大きくなるほど、事務業務や税務申告が複雑になっていきます。
②社会保険と労働保険に加入する義務がある
常時、5名以上の従業員を雇用している会社は、社会保険と労働保険に加入する義務があります。
○社会保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
○労働保険
- 雇用保険
- 労災保険
このうち、健康保険と厚生年金保険は、会社側が50%を負担します。雇用人数が増えれば増えるほど、会社側の負担額も増えていきます。
③法人住民税が高い
この税金は、税務申告の際に毎年課せられる税金で「都道府県民税」と「市町村民税」があり、個人と法人ともに課税対象です。
問題はその税額です。
個人が合計5,000円程度に対し、法人は最低でも70,000円になります。
法人住民税の内訳
- 都道府県民税(法人) ⇒ 20,000円~
- 市町村民税(法人) ⇒ 50,000円~
もし、会社の収益が赤字だった場合、この法人住民税が大きな負担となるでしょう。
【個人事業主のメリット3選】
ここからは個人事業主のメリットについてご紹介します。
個人事業主のメリットは、主に以下の3つです。
- 就業時間や場所を自由に選択できる
- 頑張った分だけ収入が増える
- 開業時や事務作業の負担が少ない
①就業時間や場所を自由に選択できる
会社と違い、個人事業主は働く時間や休日など自由に決められます。もちろん開業した場合も、事務所の場所を自由に選択できることが魅力の一つです。
プログラマーやWebライターなどのフリーランスに至っては、自宅やカフェ、ホテル、わーケーション先などで仕事をすることも可能です。
自分にとって、かなり融通のきく働き方を実現できるでしょう。
②頑張った分だけ収入が増える
会社の場合、仕事量に関わらず給料が変わらないことが多く、月の収入が一定です。
それに対し個人事業主は、専門的な能力や営業力が高ければ仕事の受注率も上がり、仕事量に比例して収入を増えすことができます。
③開業時や事務業務の負担が少ない
開業する際、個人事業主は税務署へ「開業届」を提出するだけで手続きが完了します。法人で必要な「定款」などの書類は必要ありません。
また、事業開始までに必要な「定款の承認」「登録免許税」などの、開業費用を用意する必要もありません。
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【個人事業主のデメリット3選】
個人事業主もメリットだけではありません。次に、個人事業主のデメリットについてお伝えします。
個人事業主のデメリットは、主に以下の3つです。
- 収入が不安定
- 人材確保が難しい
- プライベートと仕事の時間が曖昧
①収入が不安定
会社で働いている間は、よほどのことがない限り、給料で毎月安定した収入があります。それに比べて、個人事業は利益が出せず収入が0になることもあります。
稼げるスキル等を持っていれば、フリーランスとして自分に合う働き方ができるためメリットは大きいですが、肝心のスキルの他に営業力も必要不可欠です。
また、稼げば稼ぐほど所得税率が上昇してしまうことも覚えておきましょう。最大で所得の約半分を税金として納めなければなりません。
②人材確保が難しい
一般的に求職者は個人よりも、法人に応募する傾向が強いです。やはり信用度の面では個人の方が劣ってしまいます。
さらに法人であれば、社会保険の義務がありますが、個人の場合は従業員5人未満であれば、社会保険の義務がありません。
保険や福利厚生の手厚さも、法人が選ばれる要因のひとつです。
③プライベートと仕事の時間が曖昧
個人事業主は就業場所や就業時間が自由な反面、プライベートと仕事を混同してしまいがちです。そこで問題となるのは、体調管理とスケジュール管理です。
いくら働き方が自由とは言え、体調を崩してしまったり、仕事を受けすぎて納期に間に合わなければ、クライアントの信用を落としまいます。
自由に見える一方で、自宅などのプライベート空間で働くとストレスも解消されにくいので、しっかりとした対策や自己管理への意識が求められます。
まとめ
今回は会社設立と個人事業主のメリットとデメリットについて解説しました。
最後に、今回の記事を簡単にまとめます。
- 会社設立にも個人事業主にもメリットとデメリットの両面もある
- 会社の方が個人事業主よりも信用を得られやすい(金融面や人材確保面で)
- 一概にどちらが良いとは決めない
- 自分の事業やビジョンに合った選択を!