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会社設立の資本金
「資本金は1円以上あれば会社は設立できる」
これは検索すれば分かる事ですが、現実的に資本金1円で会社の経営ができるでしょうか?
結論、かなり難しいと言わざるを得ません。
資本金なくして会社経営はできません。
借入の選択肢もありますが、資本金1円の企業に融資してくれる金融はないと言っても良いでしょう。
この記事では
- 資本金や金額を決める際のポイント6つ
- 資本金に課せられる4つの税金について
- 資本金の払い込み方法
を中心にお伝えします。
【会社設立時の資本金はいくら?】理解しておきたい3つのポイント
資本金とは、会社設立時に発起人(出資者)によって払い込まれたお金を指します。
このお金は会社の事業資金であり、事務用品の購入、従業員の給与の支払いなどに使用することができます。
1円から資本金を設定できますが、資本金はその会社の規模レベルを示します。
資本金の金額が大きければ大きいほど、その分だけ事業や設備に投資ができます。
この資本金が「1円」の会社と「1,000万円」の会社では、金額的な信頼度や今後の期待度が大きく異なります。
1.資本金額=信用度!(1円の資本金では信用されにくい…)
法律上は、資本金1円でも会社設立は可能です。
しかし、前述でも説明した通り「1円」の会社と「1,000万円」の会社では、金額的に期待度や信頼度が異なり、資本金の金額が大きく影響します。
さらに、1円では、事業資金として意味をなしません。
借入金のみで、事業、設備、従業員の給与など支払う事となりますが、そもそも資本金1円の企業に融資してくれる金融はないでしょう。
従業員が数名で設備も必要としない場合は1円の資本金でも問題ないでしょうが、大きな金額を用意することで、ゆとりある経営ができます。
2.【使わないと損】資本金は何にでも使用できる!
「資本金は使わない方が良い」と、勘違いする方が多いですが、それは間違いです。資本金を使用することで、経営が成り立ちます。
このお金は、事業に関連する事であれば何に使用しても良いので、資本金が必要な場合は計画的かつ積極的に活用してきましょう。
- 事業費用
- 会社設備
- 従業員の給与
3.資本金は現金以外でも良い!?
実は、不動産や車などの資産を出資金にすることが可能のです。これを「現物出資」と言います。
また、会社設立時だけでなく、現物出資を利用した資本金の増資もできます。
資本金は会社の規模を示すので、総額が大きければ大きいほど、社会的信用を高めることにつながります。
なお、10万円以下の資産であれば「減価償却資産」として扱うことができます。
これにより生じる減価償却費を、経費とすることが可能です。
【会社設立時の資本金はいくら?】金額を決めるポイント3選
実際に会社を設立する場合、どのくらいの資本金を用意した方が良いのでしょうか?金額を決める3つのポイントを解説します。
1.「運転資金」と「給与」は3~6ヵ月分まで用意!
会社を設立した直後の3~6カ月は、売り上げが全くないことを想定しておきましょう。
仕入れ費や広告費などの運転資金、働いてくれる従業員がいなければ、そもそも会社として機能しません。
運転資金と従業員の給与は、最低でも3~6ヵ月分を見積もっておきましょう。
2.【簡単な計算】必要資金を把握しよう!
資本金は最低限、その会社の必要経費以上を用意することが大切です。必要資金は以下のように計算してみましょう。
(設備資金 + 運転資金 + 従業員の給与)- 「売り上げ予定額」 = 必要資金
上記の計算で、設立する会社の必要経費が分かります。
この時に、先ほど説明したように「運転資金」と「従業員の給与」を3~6ヵ月分の金額で計算しておきましょう。
○設備資金
事業開始前に必要です。
具体的には、電話や机などの事務用品、店舗を借りるための保証金など。
○運転資金
事業開始の際に必要です。
営業の際に使用する移動費、広告費、商品の仕入れなど。
3.多額の資本金がないと設立できない業種がある
ここまで、資本金は1円以上であれば会社設立が可能と説明してきましたが、なかには一定金額以上の資産がなければ設立できない業種があります。
それは「建築業」と「人材派遣会社」です。
国の許可要件の一つとなっているので注意が必要です。
▼【国土交通省】建設業の認可要件
▼【厚生労働省】人材派遣会社の許可要件
○一般建設業
自己資本500万円以上
500万円以上の資金調達能力があること
○特定建設業
資本金額が2,000万円以上
自己の資本金額が4000万円以上
○人材派遣会社
資産(負債の総額を控除した額)が2,000万円以上
現金の預金額が1,500万円以上
▼こちらもおすすめ:【会社設立の流れ】登記前と登記後の手続き

【会社設立時の資本金はいくら?】課せられる4つの税金について
資本金の金額を決める際、税金がどれくらい徴収されるか?は大きな問題でしょう。
大きい金額にしてしまうと、税金にも影響が出てしまいます。それでは実際、いくら程度の資本金の金額にしたら良いのでしょうか。
結論としては(会社の規模にもよりますが)、最大でも1,000万円以下にしておきましょう。
主に徴収される税金は以下の4つです。
- 消費税
- 法人税
- 地方税
- 登録免許税
資本金の金額などによって、税額に差が出たり、免税になるものもあります。
詳しく見ていきましょう。
1.消費税がまさかの2年間免税!?
消費税は、資本金額が1,000万円未満であれば、会社設立の第2期まで免税になります。
また、第3~4期に関しても売上高などによっては免税されることもあります。
一方、資本金額が1000万円以上であれば、第1期から課税対象です。
資本金額 | 第1期 | 第2期 | 第3期 |
1,000万円以下 | 免税 | 免税 | 売上高によっては免税 |
1,000万円超 | 課税対象 | 課税対象 | 課税対象 |
2.法人税は税率がほとんど変化しない
規模の小さい中小企業(資本金1億円以下)であれば、年間の課税所得に応じて税率が変わります。
課税所得 | 法人税率 |
800万円以下 | 15% |
800万円超 | 23.2% |
ちなみに、個人事業主の場合は最大で税率(所得税)が45%です。
中小企業であれば最大でも23.2%なので、個人事業主に比べれば税率は低めと言えます。
3.地方税は企業によって10万円の差が生まれる!
地方税とは、都道府県と市区町村へ払う税金を指します。
資本金額や従業員数によって税額が決定します。
○都道府県税
資本金額 | 税金額(年間) |
1,000万円以下 | 20,000円 |
1,000万円超、1億円以下 | 50,000円 |
○市町村民税
資本金額 | 従業員数 | 税金額(年間) |
1,000万円以下 | 50人以下 | 50,000円 |
1,000万円以下 | 50人超 | 120,000円 |
1,000万円超、1億円以下 | 50人以下 | 130,000円 |
1,000万円超、1億円以下 | 50人超 | 150,000円 |
4.登録免許税は意外と高い…
登録免許税とは、登記の際に国へ納める税金のことです。
税額は、資本金に対して0.7%の額を支払います。株式会社の場合、計算額が15万円を超えなければ自動的に15万円を支払います。
資本金が1,000万円として、実際に計算してみます。
10,000,000 × 0.7% = 70,000
15万円に満たしていないため、支払う登録免許税は15万円となります。
※ちなみに支払った税金は会社の費用となります。
▼こちらもおすすめ:【会社設立までの期間】手続きのスケジュールと目安となる日数

【会社設立時の資本金はいくら?】払い込みは個人口座へ!
お金を払い込むタイミングは、登記申請前です。この時点では、会社の口座が存在せず、作ることもできません。
つまり、資本金は個人(発起人)の口座へ振り込むことになります。発起人が複数人いる場合は、代表者の口座へ振り込みましょう。
また、登記申請の際に「資本金の払い込み証明書」を提出します。その際、以下のコピーが必要になるので、一緒に用意しましょう。
- 通帳の表紙
- 通帳の裏表紙
- 口座名義人、銀行支店名、口座番号が記載されているページ
- 入金の記帳がされているページ
まとめ
1円の資本金でも会社の設立は可能ですが、会社経営の面ではやや難しいこと等をお伝えしました。また、資本金額が1,000万円以下で節税になることは大きなメリットです。
最後に、今回の記事の要点をまとめます。
- 資本金額が高いほど社会的信用度が高い
- 資本金に組み込む「運転資金」と「給与」は3~6ヵ月分まで用意!
- 1,000万円以下の資本金で大幅な節税ができる
- 資本金の払い込みは発起人の代表者の口座へ振り込む!
会社設立の際は、登記前と登記後に手続きを行うことが多いので、こちらも併せて読んで頂くと幸いです。
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