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法人携帯の仕組み
法人携帯とは、株式会社や合同会社などの法人格が、法人名を使用して契約した携帯電話やスマートフォンのことを指します。
携帯電話・スマートフォン自体の機能(端末の性能)は一般的に市販されているものと変わりませんが、契約時に必要な書類や受けられるサポート等、細かな点が異なる部分があります。
こちらの記事では、法人携帯の仕組みだけでなく、そもそも「法人」とは何か?という基礎知識から、個人契約との違いやメリット・デメリットなどをメインに解説していきます。
法人格とは?法人に関する基礎知識
人は生まれた瞬間から「人格」を有した「自然人」に区分けされ、法的に存在を認められた「個人」です。
一方の組織・集団は、収益や公益の収集などを目的に設立されますが、この時点では組織・集団は「人格」を持っておらず、責任の所在などの権利的能力が保証されていません。そのため、この組織・集団が「権利能力」を必要とする場合は「法人登録」を行い、法的に「人格」を取得する必要が生じます。
この法的に「人格」を取得した組織・団体を「法人格」と呼びます。
人に「人格」が与えられ「個人」として認められているのと同じく、組織・集団に「人格」が与えられると「法人格」になる、とも言えます。
なお、法人格を得ることで、組織・集団における「責任の所在」が明確になる点から、法人格は「社会的信用度」が高く、一般的には個人での取引や契約よりも信用面で有利に働きます。
また税制上も、「個人」に比べて「法人格」は税率が低く設定されている点でメリットがあります。
日本国内での法人は、営利/非営利法人などの細かな区分を除いても、およそ30以上の種類が存在しています。
▼代表的な法人格一覧
法人の種類 | 略称(頭) | 略称(途中) | 略称(最後) |
株式会社 | カ) | (カ) | (カ |
有限会社 | ユ) | (ユ) | (ユ |
合名会社 | メ) | (メ) | (メ |
合資会社 | シ) | (シ) | (シ |
合同会社 | ド) | (ド) | (ド |
医療法人 医療法人財団など 医療系法人 |
イ) | (イ) | (イ |
一般財団法人 公益財団法人 |
ザイ) | (ザイ) | (ザイ |
一般社団法人 公益社団法人 |
シャ) | (シャ) | (シャ |
学校法人 | ガク) | (ガク) | (ガク |
宗教法人 | シュウ) | (シュウ) | (シュウ |
社会福祉法人 | フク) | (フク) | (フク |
行政書士法人 | ギョ) | (ギョ) | (ギョ |
弁護士法人 | ベン) | (ベン) | (ベン |
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【携帯電話】法人契約と個人契約の違い
法人についての解説は上述したとおり、法的に人格を認められた組織・集団と定義されます。そのため、個人と同様に法人としても「契約行為」が可能です。
こちらでは、この組織・集団である法人が、携帯電話・スマートフォンを契約した場合に、どのような点で個人契約と異なるのか?を解説しています。
1、料金の違い
法人で携帯電話・スマートフォンを契約する場合は、通常は複数台端末での契約が基本となっています。そのため、携帯電話端末(機器本体)での収益性や安定した利用料の徴収が担保されており、個人契約に比べると、使用料金自体は安く設定されています。
例えば、通話料のみを比較した場合、個人契約では「20~30円/分」が一般的ですが、法人契約の場合はグループ内通話(契約法人の社内間)はいつでも無料になる等、コストメリットが大きく働きます。
また、各社が「ビジネス割」のような法人割引を行っており、基本料金そのものが安めに設定されている等、優遇されたプランが用意されています。
一例として、ソフトバンクの法人向けプラン・割引サービスをチェックしてみましょう。

2、必要書類の違い
契約を締結するにあたり必要となる書類の種類は異なりますが、「所在を明らかにする書類が必要」という点では、法人も個人も大きな違いはありません。
一般的には法人契約の際に、以下の書類が必要とされています。
- 法人に関する確認書類:登記簿謄本または印鑑証明書
- 契約立会者の本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、保険証など
- 法人と契約立会者の関係性が証明できるもの:委任状、社員証、名刺など
- 支払いに必要な法人情報:金融機関情報(口座番号や届出印)、キャッシュカード、クレジットカードなど
- その他:公共料金などの領収書(電気、ガス、水道など)
3、サポート対応力の違い
キャリアによってサポート力(内容)は異なるものの、基本的には各キャリアとも「法人向け専用窓口」を設置している場合が多いです。
個人契約の相談窓口とは異なり、スムーズにつながる等のメリットがあります。
4、セキュリティの違い
こちらもキャリアによっても異りますが、Webの閲覧制限やアプリのインストール制限などを設けることが可能です。
もちろん、契約者である法人側によって、社員の携帯電話・スマートフォンを社内システムと連携させて、セキュリティ性を向上させることも可能です。
個人契約の携帯の場合は、これらの施策も自身で行う必要があるため、一定レベル以上のセキュリティを求める法人の場合は、法人契約の方が安心と言えるでしょう。
法人携帯のメリット・デメリット
ここまでは、契約の観点から、法人携帯と個人との差異についてお伝えしてきました。
ここからは「法人携帯・スマホ」を導入した場合、企業側(管理者)にとって、どのようなメリットとデメリットがあるのか?を解説します。
メリット
法人契約によって携帯電話を導入した場合、企業側にとっては、以下の5つのメリットが生じます。
- 携帯・スマホの通信費用の削減⇒固定費削減が期待できる
- 業務効率が上がる機能など⇒ビジネスフォンのように内線などを利用することで、業務の効率化がはかれる
- 社員全体の利用データーを一括管理できる⇒使用頻度の多い部署などを管理可能。またセキュリティ対策も一括で行える
- 会社全体としての費用請求が1回にまとめられる⇒経理的な処理の簡素化に貢献
- 端末の追加契約などは簡単に行える⇒社員の増減による契約が簡単に行える
基本的には、複数人存在する社員の携帯電話・スマートフォンを管理者側が「一括」で管理できる点や、費用処理を個別対応せずに「一括」で処理できる点が大きなメリットでしょう。
デメリット
法人契約による携帯電話導入にはメリットが多いものの、わずかながらデメリットも存在します。企業側(管理者)を悩ませるデメリットとして大きいのは、以下の2点です。
- 導入時のコストなどは大きくなる⇒個人契約させた電話を社用利用してもらうのとは異なり、「携帯電話本体(端末代)」まで企業側が支払う必要が生じる。
- プライベートでの使用制限⇒業務用として契約している携帯電話・スマートフォンをプライベートで使用する社員の取り締まりに苦慮する
特に2点目のプライベートでの使用については、どの範囲まで許すのか?どのように対策するのか?セキュリティ面(紛失など)をどのように対処するのか?などが課題となっています。
企業側の努力も必要となるため、導入前に方針を決めておく必要があるでしょう。
まとめ
今回の記事では、法人で携帯電話を契約する際の仕組みや個人契約との違いをメインに解説しました。
最後に、簡単にまとめます。
- 組織・集団に対して法的に「人格」が与えられたものを「法人格」と呼ぶ
- 法人は個人と比べて信用度が高く、契約や取引が有利に働く
- 携帯電話を法人契約すると、個人契約に比べて使用料などのコスト面で安くなる
- 法人契約を行う際に必要な書類は個人契約時とは異なるものの「所在を明らかにする」という観点では大きな違いがない
- 法人契約の場合、個人契約とは異なり「法人窓口」などが用意されておりサポート面で安心
- セキュリティなどの面でも個人契約時よりは法人契約時の方が安心
- 携帯電話を法人契約して導入した場合、管理者視点でのメリットとデメリットがある
- 管理者視点では携帯端末の「一括」管理や経理的な処理が「一括」で行える点などがメリット
- 一方で、プライベートでの使用をどのように制限するか?などのデメリットも存在する
- 多くの企業が抱えているプライベートでの制限やルールは導入前に検討して、方針を定めておいた方が良い