目次
複合機の導入に使える補助金・助成金
「高額OA機器に分類される複合機を補助金・助成金などで導入できれば」と、考える経営者も少なくないでしょう。
複合機の導入に特化した補助金・助成金はありませんが、複合機が対象として含まれる補助金・助成金は存在します。
今回の記事では、複合機の導入に適用可能な助成金・補助金を紹介します。
複合機(コピー機)に使える補助金・助成金
冒頭でも記載したとおり、複合機だけが対象となる補助金・助成金はありません。しかし、業務効率の改善や経営強化に関連する機器の導入を行う際に適用可能な補助金や助成金があり、これらは複合機にも適応することができます。
ここでは、複合機に使用可能な補助金・助成金を紹介します。
1、創業助成金(東京都中小企業振興公社)
創業助成金は、東京都中小企業振興公社が実施する助成金です。
東京都内限定ではありますが、これから創業したいと思っている起業家を支援することを目的に設けられた助成金制度です。
▼2021年(令和3年)の公募
令和3年度第2回 創業助成事業の募集は10月1日(金)より開始されます。申請期間は2021年10月1日(金)~同年10月12日(火)となっており、申請期間が短いので注意が必要です。
▼支給の要件
都内で創業を予定されている方または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件(※)を満たす方 ※「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者」「東京都制度融資(創業)利用者」「都内の公的創業支援施設入居者」等
▼助成限度額
- 上限額=300万円
- 下限額=100万円
▼助成対象経費
賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費など
▼参考サイト:東京都産業労働局『東京都創業NET』
2、業務改善助成金(厚生労働省)
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。
生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
▼2021年(令和3年)の公募
2021年度(令和3年度)の申請締切は、2022年(令和4年)1月31日(月)です。
※助成金は予算の範囲内で交付される、申請期間内に募集を終了する場合があります。
▼支給の要件
- 賃金引上計画を策定すること
事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定) - 引上げ後の賃金額を支払うこと
- 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
( (1) 単なる経費削減のための経費、 (2) 職場環境を改善するための経費、 (3)通常の事業活動に伴う経費などは除きます。) - 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など
▼生産性向上
- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 など
▼制度区分と助成額など
コース区分 | 引き上げ額 | 引き上げる 労働者数 |
助成金 上限額 |
助成対象 事業場 |
助成率 |
---|---|---|---|---|---|
20円コース | 20円以上 | 1人 | 20万円 | 以下の2つの条件を満たす事業場
●事業場内最低賃金と市域別最低賃金の差額が30円以内である ●事業場の規模が100人以下である |
●事業場内最低賃金900円未満:4/5 ※生産性要件を満たした場合は9/10(※)●事業場内最低賃金900円以上:3/4 ※生産性要件を満たした場合は4/5(※) |
2~3人 | 30万円 | ||||
4~6人 | 50万円 | ||||
7人以上 | 70万円 | ||||
10人以上 | 80万円 | ||||
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | ||
2~3人 | 50万円 | ||||
4~6人 | 70万円 | ||||
7人以上 | 100万円 | ||||
10人以上 | 120万円 | ||||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | ||
2~3人 | 70万円 | ||||
4~6人 | 100万円 | ||||
7人以上 | 150万円 | ||||
10人以上 | 180万円 | ||||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | ||
2~3人 | 90万円 | ||||
4~6人 | 150万円 | ||||
7人以上 | 230万円 | ||||
10人以上 | 300万円 | ||||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | ||
2~3人 | 150万円 | ||||
4~6人 | 270万円 | ||||
7人以上 | 450万円 | ||||
10人以上 | 600万円 |
※「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指します。助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に、加算して支給されます。
3、働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)
企業の生産性を向上させ、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援する目的で設立された助成金です。
▼2021年(令和3年)の公募
2021年度の交付申請は受付中(交付申請期限は2021年11月30日まで)
▼支給対象の事業主
支給対象となっている事業主は以下に該当していなければなりません。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
- 交付申請時点で、「成果目標」1から3の設定に向けた条件を満たしていること。
- 全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること
※注:中小企業事業主とは、AまたはBの要件を満たす中小企業
業種 | A:資本または出資額 | B:常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店含む) | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
▼支給対象となる取組み
以下から1つ以上を選択して実施する必要があります。なお、複合機・コピー機の導入は「9」が該当します。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
▼成果目標の設定
支給対象となる取組は、以下の「成果目標」から1つ以上選択し、その達成を目指して実施しなくてはなりません。
- 全ての対象事業場の令和3年度または令和4年度内に有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
- 全ての対象事業場において、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の規定を、いずれか1つ以上を新たに導入すること
- 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
※上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額の引上げを3%以上行うことを成果目標に加えることができます。
▼事業実施機関
現在申請受付中です。応募期限は2021年11月30日(火)まで
※現在、事業実施期間中(交付決定の日から2022年1月31日(月)まで)に取組を実施する必要があります。
▼制度区分と助成額など
取組の実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給されます。
▼以下のいずれか低い方の額
(1)成果目標1~3の上限額および賃金加算額の合計額
(2)対象経費の合計額×補助率3/4(※)
(※)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で6から9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
▼(1)の上限額
●成果目標1の上限額
事業実施後に設定する時間外労働時間数等 | ||
現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場 | 現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月60時間を超えて設定している事業場 | |
時間外労働時間数等を月60時間以下に設定 | ||
時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定 |
●成果目標2達成時の上限額:50万円
●成果目標3達成時の上限額:50万円
▼(1)の賃金加算額
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人当たり5万円 (上限150万円) |
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 (上限240万円) |
複合機(コピー機)が対象の補助金・助成金を利用する注意点
補助金や助成金は、主に国や地方自治体などが新規事業や創業促進、雇用創出などを達成するための「手段」として実施しています。
そのため、補助金・助成金の原資には税金を投入しており、予算が限られています。人気の高い補助金は募集期限前に終了してしまう場合もあるため、事前の準備が必要です。
また、タイミング以外にも申請時の注意点が3点あります。
1、支給の要件を満たさなくてはならない
助成金や補助金を申請し受理される為には、細かく設定されている支給要件を満たす必要があります。この要件に当てはまらない場合、補助金・助成金を受給することはできません。
また、補助金は「審査」が入る場合が多く、通過率は約40%と決して高くないため、そもそも審査に通らない事態も想定されます。
2、受給金額が想定より少ない場合もある
複合機購入の際に適用可能な「補助金」をいくつか紹介しましたが、実施団体の予算金額が限られている場合などは、当初の想定よりも受給金額が低くなる場合があります。
3、すぐに受給できない
補助金や助成金は、基本的には後払いとなっており、申請から受給まではかなりの期間がかかります。
以下は、東京都の「創業助成金」についてですが、申請から交付までに複数のステップがあり、交付されるまでに期間を要することは想像に難くないでしょう。
▼申請から助成金支払いまでの流れ
出典:東京都産業労働局
▼関連記事:補助金・助成金とは?

まとめ
今回の記事では、複合機・コピー機が対象となる助成金等について紹介しました。
助成金や補助金をうまく活用することで、複合機の購入負担を減らすことは可能です。しかし、これらの制度は申請の難易度が高く、審査に通過しても振り込みまでに時間が掛かります。
購入時に手持ち資金が増える仕組みではないため、注意が必要です。
最後に、記事のポイントをまとめます。
- 複合機・コピー機のみを対象とした専門の補助金・助成金はない
- 複合機などOA機器が対象となる助成金は存在する
- 今回の記事ではOA機器が対象となり得る助成金として「創業助成金」と「業務改善助成金」「働き方改革推進支援助成金」の3つを紹介
- 税金を使用した制度なので、予算決定後に公募が始まる
- 人気の制度は期限前に閉め切る場合も多々→申請のタイミングが重要!
- 返済不要の制度であるが、申請後の審査や後払いである点は注意が必要
- 当初の想定金額より受給額が低い場合もある